インターネットバンキングは、残高照会、振込、定期預金などを自宅や外出先から利用できる便利なサービスです。
一方、銀行を装ったメール・SMS・電話、偽サイト、マルウェア、遠隔操作アプリなどを使い、ログイン情報や認証コードを盗んで不正送金する犯罪が続いています。
警察庁によると、2025年のインターネットバンキングに係る不正送金事犯は4,747件、被害総額は約103億9,700万円で、その手口の約9割をフィッシングが占めました。
現在のインターネットバンキング対策では、ウイルス対策ソフトだけに頼るのではなく、フィッシング耐性のある多要素認証、公式アプリからのアクセス、通知機能、振込限度額、端末管理などを組み合わせることが重要です。偽サイトでも暗号化通信を利用でき、ワンタイムパスワードもリアルタイム型フィッシングで盗まれる場合があります。
| 主なリスク | 基本対策 |
|---|---|
| フィッシング | メール・SMSのURLを使わず、公式アプリ・ブックマークからアクセス |
| 認証情報の窃取 | パスキー・端末認証などフィッシング耐性のある認証を利用 |
| パスワードリスト攻撃 | 銀行用パスワードを使い回さない |
| マルウェア | OS・ブラウザ・アプリを更新し、不審なファイルを開かない |
| 遠隔操作 | 他人の指示で画面共有・遠隔操作アプリを入れない |
| 端末紛失 | 画面ロック、生体認証、遠隔ロックを設定 |
| 不正送金の拡大 | 振込限度額を必要最低限に設定 |
| 発見の遅れ | ログイン・振込・設定変更通知を有効化 |
フィッシングは、銀行など実在する組織を装い、偽サイトへ誘導してログインID、パスワード、暗証番号、ワンタイムパスワードなどを盗む手口です。
犯罪者は、次のような文面で利用者を急がせます。
銀行から届いたように見えるメールやSMSでも、本文中のURLからログインしてはいけません。
SMSを使うフィッシングは「スミッシング」と呼ばれます。
SMSは送信者名や電話番号を本物らしく見せられる場合があり、過去に届いた正規メッセージと同じ画面へ表示されることもあります。
SMSに記載されたURLは開かず、銀行の公式アプリや自分で登録したブックマークから確認してください。
銀行員、警察官、金融庁職員、セキュリティ担当者などを装って電話をかけ、暗証番号や認証コードを聞き出す手口があります。
発信者番号が銀行の代表番号に見えても、番号表示を偽装している可能性があります。
電話はいったん切り、キャッシュカードや公式サイトに記載された正規の電話番号へ自分からかけ直してください。
偽サイトは、銀行のロゴ、色、画面構成、URLを本物に似せて作られます。
ブラウザに鍵マークが表示されていても、安全とは限りません。鍵マークは通信が暗号化されていることを示すもので、運営者が正規の銀行であることを保証するものではありません。
検索広告やQRコードから偽サイトへ誘導される場合もあります。
郵便物、チラシ、メール、偽広告などに掲載したQRコードから、銀行や決済サービスを装う偽サイトへ誘導する手口があります。
QRコードを読み取った後は、表示されたURLと画面を確認し、ログインが必要な場合は公式アプリを開き直してください。
ワンタイムパスワードは一定時間だけ有効な使い捨てコードです。
固定パスワードだけの認証より安全性は高まりますが、偽サイトへ入力すると、犯罪者がリアルタイムで本物の銀行サイトへ転送し、不正送金へ利用する場合があります。
銀行員や警察官を名乗る相手にも、ワンタイムパスワードや取引承認番号を伝えてはいけません。
金融庁は、金融機関に対し、パスキーや公開鍵基盤を使う認証など、フィッシング耐性のある多要素認証の導入を求めています。
多要素認証とは、次の異なる要素を組み合わせる本人確認です。
パスキーやFIDO認証は、正規のサイト・アプリでなければ認証が成立しない仕組みを利用でき、偽サイトへ認証情報を渡しにくい利点があります。
利用銀行がパスキー、端末認証、FIDO認証を提供している場合は、優先して設定しましょう。
指紋・顔認証は、銀行アプリへのログインや取引承認に利用されます。
端末を紛失した場合の不正利用を防ぎやすく、パスワード入力の機会を減らせます。
ただし、生体認証だけですべての詐欺を防げるわけではありません。犯罪者の指示で本人が取引を承認した場合は、防止できない可能性があります。
他のウェブサービスから漏れたID・パスワードを使い、銀行口座へ不正ログインする手口です。
銀行、メール、通販、SNS、証券口座などで同じパスワードを使い回すと危険が高まります。
銀行用には、他サービスと異なる長いパスワードを設定してください。
理由なく短期間ごとにパスワードを変更すると、覚えやすい単純なパスワードや規則的な変更になりやすい場合があります。
使い回しを避け、漏えいの疑いがある場合や銀行から変更を求められた場合に、直ちに変更することが重要です。
マルウェアは、端末へ不正な動作をさせるソフトウェアの総称です。
銀行取引で問題となる主な種類は次のとおりです。
メール添付ファイル、不正アプリ、偽の更新通知、改ざんサイトなどから感染する場合があります。
偽の銀行員、警察官、投資担当者、サポート担当者などが、画面共有や遠隔操作アプリをインストールするよう指示する手口があります。
犯罪者に画面を見られた状態で銀行アプリへログインすると、残高、認証コード、振込画面などを確認される可能性があります。
銀行や公的機関が、電話で遠隔操作アプリのインストールを求めることはありません。
「ウイルスに感染しました」などの偽警告を画面へ表示し、記載された電話番号へ連絡させる手口です。
サポート担当者を装って遠隔操作アプリを入れさせ、インターネットバンキングから送金させる場合があります。
警告画面の電話番号へ連絡せず、ブラウザを閉じてください。閉じられない場合は、端末を再起動します。
犯罪者が本人になりすまして携帯電話会社でSIMを再発行し、SMS認証を受け取る手口があります。
突然圏外になった、身に覚えのない機種変更通知が届いた場合は、携帯電話会社へ直ちに連絡してください。
利用者と銀行サイトの通信の間へ入り、情報を盗んだり改ざんしたりする攻撃を中間者攻撃と呼びます。
暗号化通信により危険は軽減されますが、偽Wi-Fiや偽証明書、端末感染などの可能性があります。
駅、ホテル、飲食店などの公共Wi-Fiで重要な銀行取引を行わず、携帯電話回線や信頼できる自宅回線を利用してください。
銀行へアクセスするときは、公式アプリ、または事前に正しいURLを確認して登録したブックマークを使います。
メール、SMS、検索広告、SNS、QRコード内のリンクは、銀行サイトに見えても利用しないことが基本です。
銀行アプリは、銀行公式サイトの案内を確認し、Apple App StoreやGoogle Playなどの公式ストアから入手してください。
開発元、アプリ名、レビューだけでなく、銀行公式サイトから正規アプリへの案内があるか確認します。
OS、ブラウザ、銀行アプリ、セキュリティソフトは、脆弱性を修正するため最新版へ更新してください。
サポートが終了したOSや端末では、銀行アプリを利用できなくなる場合があります。
セキュリティソフトは、既知のマルウェア、不正サイト、危険なファイルなどを検知する補助的な対策です。
ただし、フィッシングメールにだまされて自分で認証情報を入力する行為や、本人が送金を承認する詐欺を完全に防ぐことはできません。
セキュリティソフトだけに頼らず、公式アクセス、多要素認証、通知、限度額設定を組み合わせてください。
1日当たりの振込限度額を普段必要な金額まで下げると、不正ログインされた場合の被害を抑えやすくなります。
高額振込が必要なときだけ変更し、取引後に戻す方法があります。
限度額引上げが即時反映されず、一定時間後に反映される銀行もあります。
身に覚えのない通知が届いた場合は、通知内のリンクではなく公式アプリから確認し、銀行へ連絡してください。
残高と入出金明細を定期的に確認すると、不正送金や少額の不審取引を早期に発見できます。
紙通帳を発行しない口座では、銀行アプリを開く習慣を付けましょう。
家族であっても、ログインID、暗証番号、ワンタイムパスワード、認証端末を共有しないでください。
共用パソコン、ネットカフェ、ホテルの共用端末からのログインも避けます。
口座が乗っ取られていなくても、犯罪者の指示を信じて本人が送金する詐欺があります。
警察、銀行、自治体、通信会社などが、電話で「安全な口座へ資金を移してください」と指示することはありません。
身に覚えのない送金を見つけたら、最初に取引銀行の正規の緊急窓口へ連絡してください。
証拠を保存する前に、メールやアプリを削除したり、端末を初期化したりしないでください。
個人向けインターネットバンキングの不正払戻しは、全国銀行協会の申合せや各銀行の規定に基づいて補償される場合があります。
利用者に過失がなければ原則補償という考え方がありますが、過失・重過失、届出時期、認証情報の管理、警察への届出、調査への協力などを踏まえて個別に判断されます。
被害額が必ず全額補償されるとは限りません。
具体的な補償条件は、取引銀行の規定をご確認ください。
法人口座は振込限度額や残高が大きく、被害が高額になりやすいため、個人以上に管理体制が重要です。
法人向け補償も、銀行と利用者のセキュリティ対策の実施状況などを踏まえて個別に判断されます。
| 確認項目 | 対策 |
|---|---|
| アクセス | 公式アプリ・ブックマークを利用 |
| 認証 | パスキー・端末認証・多要素認証を設定 |
| パスワード | 他サービスと使い回さない |
| 振込限度額 | 必要最低限へ設定 |
| 通知 | ログイン・振込・設定変更通知を有効化 |
| 端末 | OS・ブラウザ・アプリを最新版にする |
| 通信 | 公共Wi-Fiで重要取引をしない |
| 明細 | 残高・入出金履歴を定期確認 |
| 緊急連絡 | 銀行の正規の連絡先を保存 |
鍵マークだけでは本物と判断できません。偽サイトでも暗号化通信を利用できます。
安全性は高まりますが、偽サイトへ入力すると悪用される場合があります。公式アプリとフィッシング耐性のある認証を利用してください。
端末の生体認証などを使い、パスワードを入力せず本人確認する仕組みです。正規サイトと結び付くため、フィッシングに強い特徴があります。
銀行が電話、メール、SMSで暗証番号やワンタイムパスワードの全部を聞くことはありません。
重要な銀行取引は避けるのが安全です。携帯電話回線や信頼できる自宅回線を利用してください。
十分ではありません。フィッシング、遠隔操作、本人をだます送金指示は防げない場合があります。
直ちに取引銀行へ連絡し、インターネットバンキングの利用停止と振込先口座への連絡を依頼してください。
必ず全額補償されるとは限りません。過失、届出時期、銀行規定などに基づいて個別に判断されます。
インターネットバンキングでは、フィッシング、偽SMS・電話、マルウェア、遠隔操作、パスワード使い回しなどのリスクがあります。
最も重要な対策は、メールやSMSのリンクを使わず、公式アプリ・ブックマークからアクセスし、パスキーや端末認証などフィッシング耐性のある多要素認証を利用することです。
振込限度額、通知機能、端末更新、明細確認も組み合わせてください。被害に気付いた場合は、すぐに銀行と警察へ連絡し、証拠を保存することが重要です。
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