マイナス金利

最近あちこちで聞かれるようになった「マイナス金利」という言葉ですが、私たちの生活においても無縁ではありません。マイナス金利とは、一言でいうと金利がマイナスになることを意味します。通常、銀行などの金融機関に預金として預ける場合、その銀行預金残高は元本保証となることに加えて、預金金利年率〜%と設定されており、預金者は相応の利息がもらえる仕組みとなっています。しかし、マイナス金利は金利がマイナスとなっていますので、逆に利息を差し引かれてしまう仕組みとなります。つまり預金として預けていても、預金残高から利息が差し引かれて元本が目減りすることを意味します。

ただし、マイナス金利は日本銀行(以下、日銀)が、銀行などの金融機関が日銀に預ける当座預金の一部を対象としているため、個人や法人などの一般の顧客が銀行に預ける預金に対して、日銀が直接マイナス金利を適用させることはありません。マイナス金利はあくまで日銀が行う金融政策のひとつであり、銀行が日銀に預ける当座預金を世の中に出回らせて、景気回復につなげることを目的とした政策です。一般の銀行の預金金利はその預金先の銀行が設定しており、現在のところ預金金利をマイナス金利で設定する銀行はみられません。マイナス金利が銀行の収益にどれほど影響を与えるかは未知数です。しかしマイナス金利導入後、金融商品の金利水準を引き下げる動きがみられ、間接的に影響が及び始めています。

マイナス金利は日本経済の景気回復の手段として採用されており、厳密には物価の上昇を目的とした金融政策です。日本の経済は1990年初頭のバブル崩壊以降、長らくデフレに悩まされてきました。デフレとはデフレーションの略で物価が下落している状態のことを意味しますが、景気が低迷する要因とされています。物価が下落している状態とはモノの値段が安くなっている状態のことです。

例えば、製造業を営む企業において安いモノをいくら売っても売上は思ったほど上がりません。しかし製造にかかるコストなどは、モノの値段が下がっても早々に圧縮できるものではなく、利益を出しにくい状態となります。すると企業は、先行き不安から設備投資を控えたり、労働者の給与賃金を抑えたりという行動を起こします。個人においても給与や雇用に不安が生じると、家計の出費を抑える動きにつながります。このように誰もがお金を使いたがらない状態では、景気が刺激されるはずもありません。

第二次安倍政権はデフレが景気回復の妨げになると考え、アベノミクスによるデフレ脱却を本格化しました。日銀も政府に同調する動きをみせ、日銀総裁である黒田総裁を中心に物価の上昇目標を2%と設定し、異次元緩和といわれる過去に例をみない大規模な金融緩和策を現在まで強烈に推し進めてきました。しかしデフレの根は深く、個人消費や企業の設備投資などが思うように進まないことから、資金の出し手としての役割を担う銀行の貸し出しの活発化に着手します。

マイナス金利は、銀行などの金融機関が日銀に預ける当座預金の残高を対象としています。ただし厳密には、ある基準時点よりも増加している残高の部分を対象としています。つまり新たに日銀に預けると、マイナス金利を課すことを意味していることになります。マイナス金利が課されないようにするには、企業に貸し出すなど日銀に預けないようにしなければなりません。こうした仕組みで銀行貸出を促し、景気回復に活用させようとしたことがマイナス金利導入の目的です。

マイナス金利の導入後、金融市場や金融商品を取り巻く環境は大きく変化しています。市場金利(10年国債が取引されている金利水準)はマイナスとなり、10年の国債を購入しても運用利回りがマイナスとなる事態に陥りました。また民間銀行は普通預金や定期預金などの預金金利に加えて、住宅ローンなどのローン商品の借入金利も軒並み引き下げて対応しています。

市場金利や預金金利のさらなる低下によって、あらためて資産運用に焦点があたっています。日銀はマイナス金利導入以前から、金融緩和策の一つとしてETFやJ-REITといった上場株式投資信託や上場不動産投資信託などのリスク資産の買い入れを進めてきました。また日銀は2%の物価安定目標を掲げていますので、目標にめどが立つまで現在行われている金融緩和策を継続して実施されることが考えられます。まだまだ道半ばですが、将来的には持続的な物価上昇のサイクルが構築されることに変わりはなく、物価の上昇に備える個人投資家も増えています。

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