口座維持手数料

金融機関の口座維持手数料とマイナス金利政策

日本銀行の「マイナス金利政策」とは?

日本銀行の「マイナス金利政策」とは?

2016年に日本銀行が始めたマイナス金利政策は、同行が全国の金融機関から預かった資金の一部にマイナス年0.1%の金利を付けるというものです。

通常はプラスの値である金利がマイナスになることで、金融機関は日本銀行へ資金を預けても利息が受け取れなくなりました。そして逆に、利息分の金額を日本銀行へ支払います。

一見、金融機関に不利なだけの政策に思えますが、金融機関が日本銀行に資金を預けるのを控えて、個人や中小企業へ積極的に資金を使う(融資をする)ことが期待できるので、経済活性化やデフレ脱却の効果が狙えます。

銀行業界の経営の悪化

銀行業界の経営の悪化

しかし元々、利ざや(貸出金利から預金金利を差し引いた利益)の縮小に悩んでいた昨今の銀行業界にとっては、日本銀行への預金で利息を取られるマイナス金利政策がさらなる経営悪化の一因となっています。

そして積極的な融資どころか、預金金利の引き下げや各種手数料の値上げといった現象につながっています。

口座維持手数料とは?

口座維持手数料とは?

そんな経営悪化の著しい銀行業界の新たな収益源として注目を集めているのが、口座維持手数料です。

口座維持手数料とは、預金口座を所有する利用者から定期的に一定の手数料を徴収するもので、導入されれば利用者が今まで無料で所有できた銀行の預金口座が有料になります。

日本ではなじみの薄い手数料ですが、欧米ではすでに取り入れられており、たとえばアメリカでは口座維持手数料はデビットカード加盟店手数料、振込振替手数料、当座貸越手数料などと並んで、主要な預金関連手数料です。

口座維持手数料への反発

口座維持手数料への反発

また2015年から中央銀行がマイナス金利政策を行っているスイスでは、国内最大手の銀行UBSが大口の個人向け預金口座に対してマイナス金利を課すという形で口座維持手数料を徴収しています。

日本でも実はバブル崩壊後の1994年や、金融再編が活発だった1999年に口座維持手数料の導入が検討されています。

しかし利用者の反発が大きく、定着には至らなかったという経緯があるため、銀行側も新たな収益源として再び注目しつつも導入には慎重です。

口座維持手数料のアンケート調査

口座維持手数料のアンケート調査

実際に、オリコンのアンケート調査では「口座維持手数料が導入された場合、預金を解約するか?」という質問に4割以上が解約すると回答しています。

そして、口座維持手数料を導入しない銀行に人気が集中したり、金銭を自宅で管理するタンス預金が行われる可能性があります。

「口座維持手数料」以外の収益源

「口座維持手数料」以外の収益源

このように口座維持手数料は利用者の反発が予想されるため、銀行では口座維持手数料以外の収益源も模索されています。

たとえば一部の銀行では、経営悪化や消費増税などを受けて、振込手数料などの各種手数料を値上しています。また、預金通帳を発行しない「通帳レス口座」を導入して印紙税を削減する動きもあります。

経営コストを抑えるために、実店舗を設置しない来店不要型支店を設置するケースも増えていて、各銀行の取り組みが注目されます。

定期預金と口座維持手数料

口座維持手数料の無料化

口座維持手数料の無料化

口座維持手数料が万が一導入された場合には、支払い義務が発生するのは主に普通預金です。

そのため、複数の銀行に普通預金を口座開設していると、口座維持手数料がかさむ可能性があります。

欧米でも普通預金に口座維持手数料を課す銀行は多いのですが、所定の取引実績を満せば口座維持手数料を無料にできたりします。

もし日本に口座維持手数料が導入されても、このような無料化のサービスが提供される可能性があります。

「口座維持手数料」以上の利益

「口座維持手数料」以上の利益

このように、普通預金以外の預金商品(定期預金など)には基本的に口座維持手数料がかかりません。

そのため万が一口座維持手数料が導入されても、定期預金で資産運用をして口座維持手数料以上の利益を得れば赤字が防げます。

しかしながら、現在の定期預金は全国的に低金利傾向にあるので利息はわずかです。そのため、金利上乗せ定期預金を提供している銀行や手数料割引サービスを提供する銀行と取引して、効率良く資産運用する必要があります。

インターネット銀行の金利と手数料

インターネット銀行の金利と手数料

インターネット銀行のように、口座維持手数料導入の可能性が低く、定期預金金利も高い銀行と取引するのも一法です。

「インターネット銀行」とは実店舗を持たず、おもにインターネットバンキングからすべての取引を行う金融機関で、預金通帳なども発行しないため普通銀行よりも経営コストが少ないです。そのため利用者への還元も手厚いです。

インターネット銀行は、定期預金金利の引き下げなどの動きもありますが、それでも定期預金金利が平均よりも高い傾向にあります。また、振込手数料やATM利用手数料なども安いため、口座維持手数料を気にせずに取引できます。

日本の金融機関の口座維持手数料

口座維持手数料の導入の検討

口座維持手数料の導入の検討

今のところ日本国内では普及率の低い口座維持手数料ですが、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行などのメガバンクが中心となって口座維持手数料の導入を検討しています。

万が一これらのメガバンクが口座維持手数料を導入すれば、マイナス金利政策から経営悪化傾向にある全国の地方銀行やゆうちょ銀行なども追随する可能性があります。その際には口座維持手数料の金額には、銀行ごとにバラつきが出ることが考えられます。

そのため各銀行の口座維持手数料の規定を比較検討して取引することが重要になります。

SMBC信託銀行の口座維持手数料

SMBC信託銀行の口座維持手数料

たとえば、現在、日本国内の銀行で唯一口座維持手数料を導入しているSMBC信託銀行が、比較検討する際の一定の基準になりえます。

SMBC信託銀行は、利用者からは月額2,200円(税込み)の口座維持手数料を徴収しています。月額2,200円(税込み)は金融機関の手数料の中でも高額な部類に入りますが、その一方で優遇サービスも充実しています。たとえば普通預金の新規口座開設月は無条件で、口座維持手数料が無料です。

さらに新規口座開設月以降も、一定以上の月間平均総取引残高がある利用者などは口座維持手数料を無料にすることが可能です(2021年2月25日現在)。

PayPay銀行の口座維持手数料

PayPay銀行の口座維持手数料

過去に口座維持手数料を導入していた「PayPay銀行」も参考になります。

PayPay銀行は2000年に設立された日本初のインターネット銀行で、利用者から月額189円の口座維持手数料を徴収していました。

もちろん、同時に「口座維持手数料永久無料プラン」という優遇サービスを提供して、自動振替サービスなどを契約した利用者に対して口座維持手数料を無料にする取り組みも行っていました。

しかし当時、他の金融機関が口座維持手数料を導入していなかったこともあって、2012年7月に口座維持手数料および口座維持手数料永久無料プランを廃止しています。

SBI新生銀行の口座管理手数料(口座維持手数料)

SBI新生銀行の口座管理手数料(口座維持手数料)

また、実際に口座維持手数料を徴収してはいないものの、口座維持手数料に関する規定が存在する「SBI新生銀行」のような金融機関もあります。

たとえば2021年2月現在、SBI新生銀行は口座維持手数料無料で利用できますが、「新生総合口座パワーフレックス」の利用規定には、「口座管理手数料」に関する項目があるのです。

名前こそ違うものの「口座管理手数料」と「口座維持手数料」は同じもので、万が一「新生総合口座パワーフレックス」に口座管理手数料が導入された場合は、円普通預金から所定の金額が自動引き落としされる旨が利用規定に記載されています。

このような各銀行の規定を確認して、口座維持手数料の導入に備えるとよいでしょう。

海外の金融機関の口座維持手数料

米国の金融機関の口座維持手数料

米国の金融機関の口座維持手数料

欧米を始めとする海外では、多くの金融機関が口座維持手数料を取り入れています。

ただし口座維持手数料の金額や発生条件は国によって異なり、たとえば米国はチェッキングアカウント(普通預金)の預金残高が一定以下だと口座維持手数料が発生する仕組みが主流です。

「バンク・オブ・アメリカ」「シティバンク、ウェルズ」「ファーゴ」などの大手銀行の多くがこの仕組みで、とくにチェッキングアカウント(普通預金)の預金残高が1,500ドル以下だと口座維持手数料が発生するケースが多いです。

しかし一部の銀行では、毎月一定の入金や出金取引を行っている利用者、さらに一定以下の年齢の利用者などは、口座維持手数料が無料になるサービスを提供しています。

フランスの金融機関の口座維持手数料

フランスの金融機関の口座維持手数料

一方のヨーロッパでは、フランスの銀行における口座維持手数料の値上げが注目されています。

フランスでは9割の銀行が口座維持手数料を導入していますが、経営悪化の影響で2013年から2018年にかけて各銀行の口座維持手数料が平均で3倍も増えているのです。

フランスの銀行では、クレジットカード、デビットカード関連の手数料、ATM利用手数料、残高証明書の発行手数料といった各種手数料も積極的に徴収しているため、利用者の負担は年々重くなっています。そのため昨今は、口座維持手数料の安い郵便局で預金口座を開設する利用者が増えています。

イギリスの金融機関の口座維持手数料

イギリスの金融機関の口座維持手数料

同じヨーロッパでも、イギリスは日本のように口座維持手数料が無料の銀行が多いのですが、預金口座の種類によっては口座維持手数料が発生します。

たとえばイギリスの銀行では、国内に住む「居住者」と国外に居住する「非居住者」で開設できる預金口座が異なります。そして非居住者はインターナショナルアカウント(国際口座)という預金口座を開設します。

しかし、このインターナショナルアカウント(国際口座)には、口座維持手数料が発生するのです。一定以上の預金残高があれば口座維持手数料が無料になるケースもありますが、無条件で口座維持手数料が無料になる場合が多い居住者向けの預金口座と比べて不利な条件になっています。

香港の金融機関の口座維持手数料

香港の金融機関の口座維持手数料

転じてアジア圏の銀行を見てみると、香港では2019年に主要な銀行が相次いで口座維持手数料を廃止しています。

発端は2019年6月に一部の預金口座の口座維持手数料を廃止した香港最大手の銀行である「HSBC」です。その後、「スタンダードチャータード銀行」や「中国銀行」など複数の銀行も相次いで一部の預金口座の口座維持手数料を廃止しています。

なぜなら、香港では中国の複数の大手IT企業がインターネット銀行を開業するなど、銀行業界の競争が激化しているからです。口座維持手数料の廃止も、その影響を受けています。

インターネット銀行と口座維持手数料

インターネット銀行の口座維持手数料の導入

インターネット銀行の口座維持手数料の導入

メガバンクを中心とする日本の普通銀行は、マイナス金利政策などによる経営悪化を受けて口座維持手数料の導入を議論しています。しかし万が一導入された場合には、他の金融機関への乗り換えを検討するという利用者が少なくありません。

すべての金融機関が一律で口座維持手数料を導入するとは限らないので、口座維持手数料を徴収しない金融機関に利用者が流れる可能性が考えられます。そこで注目されているのが、インターネット銀行です。

インターネット銀行は実店舗を持たず、インターネットバンキング、ATM、郵送などで取引をする金融機関です。経営コストが少ないために金利優遇サービスや手数料優遇サービスが充実しており、口座維持手数料導入の可能性が低いと見られています。

インターネット銀行の預金金利の引き下げ

インターネット銀行の預金金利の引き下げ

口座維持手数料導入の可能性が低いインターネット銀行ですが、収益確保のために預金金利の引き下げなどを行う可能性はあります。

たとえば、auじぶん銀行、PayPay銀行、セブン銀行など、多くのインターネット銀行が過去に普通預金や定期預金の金利引き下げをしています。

また、ATM利用手数料や振込手数料といった各種手数料の月間無料回数を減らすケースもあるため、各種手数料の改定にも注意しましょう。

とはいえ、多少のことがあってもインターネット銀行は普通銀行よりも各種手数料の金額が安く、預金金利も普通銀行より高い傾向にあります。

インターネット銀行の年会費無料とポイントサービス

インターネット銀行の年会費無料とポイントサービス

普通銀行は口座維持手数料の検討以前より、収益確保のために様々な各種手数料を徴収しており、クレジットカード、デビットカード、インターネットバンキングなどの各種サービスにおいても年会費を徴収する場合があります。

しかし、インターネット銀行ではこれらの各種サービスもほとんど年会費無料で利用できます。

その上インターネット銀行の多くは、各種サービスの取引内容に応じて優遇特典が得られるポイントサービスを提供しています。

口座維持手数料と未利用口座管理手数料

休眠口座の手数料

休眠口座の手数料

普通預金を口座開設するだけで、利用者から口座維持手数料という一定の金額を徴収する仕組みには、相当の反発が予想されます。

そこで注目されているのが「休眠口座」からの徴収です。休眠口座とは、金融機関に開設したまま長期間の入出金がない預金口座のことで、一利用者が複数の金融機関と取引するケースの多い日本には、かなりの数の休眠口座が存在すると言われています。

そして一部の銀行では、休眠口座の一歩手前の預金口座に対して、すでに独自の手数料を徴収しています。

りそな銀行の「未利用口座管理手数料」

りそな銀行の「未利用口座管理手数料」

たとえば、りそな銀行は2年以上入出金がない普通預金口座を「未利用口座」と呼び、年間1,320円(税込み)の「未利用口座管理手数料」を徴収しています。

ただし、普通預金口座の預金残高が1万円以上の場合、同一支店内に他の金融資産がある場合、融資商品を契約している場合などは、未利用口座管理手数料が発生しません。

ちなみに、普通預金口座の預金残高が未利用口座管理手数料未満(1,320円未満)の場合は、預金残高の全額を徴収した上で普通預金口座が解約されます。解約と同時にりそな銀行との取引も終了するため、それ以上、未利用口座管理手数料は徴収されません(2021年2月25日現在)。

ローソン銀行の「未使用口座管理手数料」

ローソン銀行の「未使用口座管理手数料」

ローソン銀行も2年以上の入出金がない普通預金口座を未使用口座とみなし、年間1,320円(税込み)の「未使用口座管理手数料」を徴収しています。

りそな銀行と同様に、メールまたは文書による事前連絡をするが特徴で、連絡後も3カ月以上取引がない場合にのみ「未使用口座管理手数料」を徴収します。

さらにローソン銀行も、同一支店内で定期預金を利用している場合、2年以内にインターネットバンキングにログインしている場合、普通預金口座をクレジットカードの引落口座に指定している場合は、未使用口座管理手数料が発生しません(手数料は2021年2月25日現在)。

「休眠預金等活用法」

「休眠預金等活用法」

こういった銀行だけではなくて、国も預金者保護や一元管理などを目的とした休眠口座対策に乗り出しており、2018年には「休眠預金等活用法」が施行されています。

休眠預金等活用法とは、10年間、入出金などの取引がない預金口座を休眠口座とみなし、預金保険機構に管理を移行するというものです。

ただし、預金保険機構に移行された後でも預金口座の払い戻しは可能なので、預金者の権利が無くなるわけではありません。もし、移行後も払い戻しがない場合は、休眠口座の預金は民間公益活動などに活用されます。

< 戻る | 進む >

定期預金の金利の比較

メニュー

Copyright (C) 2008-2024 定期預金の金利の比較 All Rights Reserved.